『総合技術監理 キーワード集 2019』の第1章 総合技術監理 には、「総合技術監理の技術体系と範囲」が示されています。ここで初めて総監の5つの管理について触れられますが、これは別表にまとめられた内容を引用します。
(1)経済性管理
事業企画,品質の管理,工程管理,現場の管理と改善,原価管理,財務会計,設備管理,計画・管理の数理的手法
(2)人的資源管理
人の行動と組織,労働関係法と労務管理,人材活用計画,人材開発
(3)情報管理
情報と意思決定,コミュニケーションと意思決定,知的財産権と情報の保護と活用,情報通信技術動向,情報セキュリティ
(4)安全管理
安全の概念,リスクマネジメント,労働安全衛生管理,事故・災害の未然防止対応活動・技術,危機管理,システム安全工学手法
(5)社会環境管理
地球的規模の環境問題,地域環境問題,環境保全に向けた取り組みの基本原則と手法,CSRと組織の環境管理活動
キーワード集の第2章~6章までが5つの管理それぞれに対応し、例えば上記の「(1)経済性管理」は、キーワード集の大項目である「2.経済性管理」になっています。また上記の「事業企画は、キーワード集の忠告目である「2.1事業企画」になっています。各中項目の中には、さらに小項目に当たるキーワードが列記されていますが、総監の技術体系を理解するには、まず上記の表の内容に該当する中項目までの構成を頭に入れる必要があるでしょう。筆記試験では、対象とする業務や課題が大項目~中項目の何に該当するのか整理できれば、論文の構成に活かすことができるためです。
キーワード集の各中項目は、は以下のような記述となっています。「2.1事業企画」を引用します。
2.1 事業企画
事業企画とは,事業のアイディアや案件を具体化するために,事業計画を策定する業務である。まず,事業の収支を予測し,事業として成り立つかどうかを判断するフィージビリティスタディが行われ,事業の実施決定後,事業の活動計画を前もって策定する事業計画が立案される。後者は,工場などでは生産計画,建設現場などでは施工計画もしくは工事計画と呼ばれる。事業企画では,キャッシュフローを考慮するファイナンスの視点や,公共施設等の建設・管理を民間の資金・能力を活用して行う PFI などの概念も重要である。事業投資計画
事業投資評価
現在価値
正味利益法
回収期間法
投資利益率法
ライフサイクルマネジメント
リスク評価
PDCAサイクル
投資回収計画
環境評価
事業継続計画(BCP)
信頼性設計
保全性設計
コンカレントエンジニアリング
デザインイン
フロントローディング
フィージビリティスタディ
市場調査
需要予測
PFI(Private Finance Initiative)
施工計画
工事計画
仮設計画
工程計画
工事総合工程表
予算計画
安全衛生計画
工法計画
いかがでしょうか。中項目以下の項目(小項目)の数も多く、おのおのが独立した管理技術であったりします。内容も経済性管理と言いつつ、リスク評価や環境評価といった、他の5つの管理に該当するものも含まれています。そのため、ここでは小項目と中項目の対応関係まで細かく覚える必要は無いと思います。筆記試験に向け事前に準備すべきことは、各キーワードを自分の言葉で説明(200文字~300文字程度)できるようにすることです。これは択一試験対策にもなりますが、筆記試験の解答もなるべく総監のキーワードを用いて書く必要があるためです。キーワードを使って論文を書けば、おのずと5つの管理を理解していることをアピールできるためです。もちろん誤った使い方をしては逆効果ですので、キーワードの内容を説明できるような準備も必要、ということです。
なお、「2.1事業企画」には、青本には無く新たに加えられたものが散見されます。デザインイン、フロントローディング、PFIです。これらはこの十数年で提起され実際に使われているキーワードですので、注意が必要でしょう。
つぎに、最後の記述を引用します。
総合技術監理は,業務全体を俯瞰し,これら5つの管理に関する総合的な分析・評価に基づいて,最適な企画,計画,実施,対応等を行う監理業務ということができよう。
ここには総監が、「業務全体を俯瞰し、5つの管理に関する総合的な分析評価に基づき」、「企画、計画、実施、対応等を行う管理業務」とあります。技術士法2条にある技術士業務は、「計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務」でした。ふたつの業務は似ているようで、用語はだいぶ異なります。ただし総監の業務には「等」が入っていますので、厳密な区別は難しいかもしれません。それより注意すべきことは、総監の業務に「最適な」という形容詞があることです。後々出てまいりますが、業務全体の「最適化」をはかることが、総監の目的になるためです。このことが、わずかですが上記の引用部分に記載されていることに注意してください。