総合技術監理における総合管理技術とは何だろう?

総合技術監理 キーワード集 2019』の第1章 総合技術監理 には、「総合技術監理における総合管理技術」が示されています。「総合技術監理」と「総合管理技術」とは、似て非なるもののようですが、これを理解しないと総監の本質にはたどり着きません。この章を引用します。

総合技術監理では,5つの管理を独立に行うのではなく,互いに有機的に関連づけて,あるいは統一した機軸の下で行うことが望ましい。しかし個別の管理から提示される選択肢は互いに相反するものであったり,トレードオフの関係にあったりすることが多い。
そこで,それらを調整し統一的な結論の提示,もしくは矛盾の解決・調整を行うための総合管理技術があると望ましい。しかし,残念ながら現状ではこのような管理技術として統一的に広く適用可能な方法論は確立されていない

いきなり、おやっ?という記述がされていますね。前半では総監の5つの管理について、お互いに関連付け、統一した機軸の下で行うべきであるが、5つの管理個別での提示されることはお互いに相反したり、トレードオフの関係にあったりする、とされています。この「5つの管理同士の相反、トレードオフの関係」が、総監の前提にあることを、まずはご理解ください。

しかし、「それらの解決・調整のための総合管理技術としては、統一的に広く適用可能な方法論は確立されていない」、と自己否定をしています。続けて引用します。

ただし,比較的体系化が進んだ技術として利用されているものとして,いくつかのアプローチが存在する。経済性管理の立場からは,総合的品質管理と組織経営戦略の策定を結び付ける方法,管理会計の考え方による方法がある。また,与えられた選択肢(代替案)の中から最も望ましいものを選択するための方法論である意思決定論の考え方を適用する方法もある。安全管理の立場からは,組織経営戦略におけるリスクの視点からマネジメントを統合的に捉えるリスクマネジメントを適用する方法がある。何れの方法も,現状を分析し,課題の設定を行い,その課題を解決することを目的としている。

前段では広く適用可能な方法論は確立されいないとしていますが、ここでは総合管理技術の手法として、経済性管理の立場では総合的品質管理(TQM:Total Quality Management)と組織経営戦略を結び付ける方法、管理会計の考え方による方法、安全管理の立場ではリスクマネジメントを適用する方法をあげています。続けて引用します。

実社会において事業運営や組織活動を行う場合,各管理の重要性や優先順位は,外部環境や内部環境,そもそもの目的などによって異なってくるものである。しかしながら,何らかの前提を置き,バランスに配慮し,共通理解を深めながら合意形成を行い,答えを見出すことは常に求められることである。上で紹介した総合管理のための技術は,もともと総合技術監理全体を総括する枠組みとして位置付けられているものではないが,総合技術監理の骨格となる5つの管理技術の中で共通に,あるいはその調整のために使用されるべき考え方である。

分かりずらい記述と思いますが、実際の事業や組織では、状況に応じてバランスを重んじ合意形成する必要があり、その調整のため総合管理技術(TQM、リスクマネジメント、管理会計、他にもいろいろあるでしょう)を使いこなすべき、という記述でしょう。最後の引用です。

。そしてこれらの総合管理技術もまた,単独で用いられるというよりは,組織の実情に伴って,あるときはいずれかを重視し,またあるときは別の総合管理技術を適用する,さらにはいくつかを組み合わせることにより相乗効果の実現を目指すといった活用がなされるべきであろう。しかしいずれの場合でも,総合技術監
理の骨格となる5つの管理を総合的に勘案し,事業運営や組織活動における重要性や優先順位を判断することが必要である。特にこれらをある程度の人数の協働作業により合意を形成していくプロセスは極めて重要であり,組織として適切な方法を探っていかなければならない。

最後は5つの管理の適用を総合的に勘案し重要性や優先順位を判断せよ、と述べています。そしてある程度の人数の協業で合意形成も必要と述べており、そうしたプロセスを組織では重視するとまとめています。逆に言えば、合意形成の手法として5つの管理の総合的な活用や総合管理技術の適用がある、ということになるでしょう。合意形成なく技術者の勝手な判断で事業や組織運営を行うことを、ここでは戒めています。