総監技術士を目指す皆様に、受験対策のポイントと、受験対策そのものが総監技術士になってからどう役に立つかをお伝えします。総監受験対策は単なる暗記ものではありません。受験生がステップアップするための大切なツールにもなります。
総監受験対策は業務洗出しと独学独習の二本立て
総監受験を目指す皆さんのほとんどは一般部門の技術士の方でしょう。非常に少数ですが一般部門と併願で受験される方もいらっしゃり、専門分野をお持ちで、かつマネジメントを経験されている方が多いようです。またマネジメント経験は併願でなくとも総監受験の前提になります。皆さんの実際の業務では専門分野の知識や経験だけでは足りることはなく、様々なマネジメントを行われているはずです。そうしたマネジメント経験を洗い出すことから総監受験対策は始まります。
ではマネジメントで具体的にどんなことを行うかですが、プロジェクトマネジメントを例に考えてみます。プロジェクトは3つの要素からなっています。ひとつはスコープ(範囲・規模)と品質、ひとつは時間、最後に資源(人、もの、金など)です。限られた時間と資源を使い、目的とする範囲や規模で仕様に示された品質を達成する、というのがプロジェクトマネジメントとなります。実際のマネジメントでは時間と資源の配分調整を行い目的を達成することが主眼となります。これは総監でのトレードオフの調整に当たるものです。総監受験生の皆さんもプロジェクトマネジメントの手法を日常的に活用し、有期のプロジェクトや日常業務の円滑な遂行をやられているはずです。
総監の体系にはプロジェクトマネジメントの他、様々な管理技術の体系が包含されています。例えばリスクマネジメント、TQM(総合的品質管理)などです。そうした体系も受験生の皆さんは何らかの形で取り組まれていることでしょう。総監受験での業務洗出しとは、管理技術の視点から業務経歴を見直すことから始まります。またそのことが受験申込書の作成と記述式論文のネタ作りにつながってまいります。
次に独学独習についてですが、総監の5つの管理(経済性管理、人的資源管理、安全管理、情報管理、社会環境管理)のすべてに精通されている受験生は、多くはいらっしゃらないことと思います。5つの管理についてキーワード集が文部科学省と日本技術士会より最近公開されましたが、全部で800を超えるキーワードについてまんべんなく理解をしている方は滅多にいないのでは、と想像いたします。特にキーワード集に沿って択一式問題を解く場合には、キーワードそのものを独学で学び、独習で習得する必要があります。これは添削や講習で会得するものではなく、自分ひとりで行う受験対策です。キーワードの数が多いため、時間も必要とされますが、総監の体系を理解するための基礎でもあり、欠かすことは出来ないでしょう。
独学独習は後で必ず役に立つ!
キーワードを独学独習で学習、習得し、過去問や模擬試験問題をこなす中で、総監の技術体系を体で覚えるような段階に進んでくると思います。体で覚えるというのは、繰り返しキーワードの意味を反すうしたり、書き出したりすること、また過去問を何回も解くことで暗記してしまうことを指します。丸暗記をされる場合もあるかもしれません。暗記学習には限界があって、覚えているようですぐに思い出せないこともあり、覚える分量にも上限があることでしょう。そのため実際はある程度の時間をかけ反復学習で身に付ける必要があります。
そうして身に付けたキーワードでも時間が立てば忘れてしまうことも多いと思います。しかし独学独習したキーワードは、総監試験が終わってから何かの機会に触れた場合、イメージだけでも蘇ってくるものです。キーワードリストとして自分で内容を書き留めていれば、リストを見返すことではっきりと蘇るはずです。また過去問などで触れていた場合でも、設問と関連づけられた記憶が蘇ってくるかもしれません。800のキーワードすべてが蘇るものではないでしょうが、5つの管理の広範な分野の要所要所に皆さんの記憶の楔が打たれているはずです。これが後々に役に立ってまいります。
例え丸暗記であっても、800のキーワードの独学独習は相当な量になります。1キーワードを150文字で要約したとしても、150文字×800=120,000文字で、単行本1冊の分量です。キーワードのシャワーとも言える量であり、最初はほとんどが忘れ去られる運命かもしれません。しかし繰り返し独習することで記憶の片隅に残るものも多いと思います。経済性管理、人的資源管理、安全管理、情報管理、社会環境管理と、ともすれば薄く広くなってしまうキーワードの記憶が、やがてどこかでつながりや結びつきができ、自分の業務や社会情勢などとも自然と関係付けででてくるはずです。そこからが独学独習の成果が出るところになります。
総監技術士はイノベーターの素養となる!
総監技術士は管理職の技術者が取得するイメージがあるかもしれませんが、むしろ現役バリバリの技術者に取得してもらいたい資格です。現代は持続的社会の構築のために様々な困難な課題の解決が求められています。いわばトレードオフの森をかいくぐる技術者でなければ、複雑な課題の解決には向かないとも言えます。また課題解決には従来の発想とは異なる視点での取り組みも不可欠です。それはまったくの新規アイディアや新規技術から生み出されるのではなく、二つ以上の異なる分野同志の組み合わせ、掛け算から生まれるものです。
総監技術士のツールである5つの管理とトレードオフの調整策は、二つ以上の異なる分野を顕在化させたり、調整するには役立つものです。様々な視点で事象、技術、アイディアをながめ、また逆に事象やアイディアから5つの管理の部分を抜き出すなど、自由な思考を生み出す可能性があると私は考えます。エンジニアからイノベーターへの飛躍のためにも総監技術士をぜひ取得されてください!